一棟ビル売却は最高額の買付で決める?7,000万円以上低い提示を採用した事例

一棟ビルの売却で複数の買付が届くと、最も高い金額を選びたくなるのは自然なことです。ただし、提示ごとに取引条件や引き渡し条件が異なると、買付価格だけでは判断しにくくなります。

今回ご紹介するのは、水天宮前駅から徒歩5分圏内にある1棟商業ビルの売却事例です。5本以上の買付または取り纏め依頼書が集まりましたが、採用されたのは最高額より7,000万円以上低い提示でした。成約から引き渡しまでの期間は2ヶ月半です。

これは、低い提示を選ぶべきだという事例ではありません。買主の属性や取り纏め依頼書に記載の条件などにより一概に最高価格で決まるわけではないという好例です。

本記事では、テナント付きビルの買付比較で確認したい項目と、問題を見落とさないための手順をやさしく整理します。

この記事のポイント

  • 買付価格と取引条件、引き渡し条件を同じ書式で比較します
  • 用途変更、登記と現況の不一致、未登記プレハブ、電線の越境、境界非明示は論点ごとに整理します
  • 今回の事例では、5本以上の買付または取り纏め依頼書から最高額ではない提示が採用されました
  • 成約から引き渡しまでの期間は2ヶ月半でした
  • 最高額より低い提示を採用した具体的な理由は、買主の属性と融資特約の有無でした

先に結論

一棟ビル売却では、最高額の買付を選ぶとは限りません。買付価格だけでなく、契約・決済の日程、引き渡し条件、テナントとの調整、境界非明示、電線の越境、未登記プレハブなどの扱いを同じ表で比較することが大切です。今回も最高額より低い提示が採用されましたが、総合的に判断されるという好例となりました。

目次

結論|一棟ビル売却では、買付価格と取引条件を分けて比べます [S2] [S5]

一棟ビル売却では、買付価格の順位だけで候補を絞ると、ほかの条件を見落とすことがあります。価格とあわせて、契約日、決済日、引き渡し日、買付に付された条件、物件にある課題の扱いを確認してください。

テナント付きビルでは、建物だけでなく、賃貸条件や関連する契約書も確認対象になります。国土交通省の資料でも、不動産の調査項目として、境界、越境、法令への適合状況、賃貸条件、各種契約書などが挙げられています。

買付比較では、「いくらで買うのか」と「どの条件で取引するのか」を同じ表にまとめます。条件の意味や法的な効果が分かりにくい場合は、採用を伝える前に専門家へ確認すると安心です。

  • 買付価格と手取りの見込みを分けて確認する
  • 契約日、決済日、引き渡し日を並べる
  • 買付に付された条件を原文で確認する
  • 境界、越境、未登記部分の扱いを整理する
  • テナントやリースバックに関する条件を確認する

事例概要|複数の問題がある1棟商業ビルを2ヶ月半で引き渡し [S1]

売却対象は、水天宮前駅徒歩5分圏内の1棟商業ビルです。成約後、物件、テナント、設備契約に関する複数の事項を調整し、2ヶ月半で引き渡しまで取りまとめました。

買付または取り纏め依頼書は5本以上取得しています。ただし、採用されたのは最高額の提示ではなく、最高額より7,000万円以上低い提示でした。

具体的な提示額、成約価格は明示出来ませんが、最高額を採用しなかった理由は、主に買主の属性と融資特約の有無でした。

  • 物件:1棟商業ビル
  • 立地:水天宮前駅徒歩5分圏内
  • 取得した買付または取り纏め依頼書:5本以上
  • 採用された提示:最高額より7,000万円以上低い提示
  • 成約から引き渡しまで:2ヶ月半

売却時の論点|用途変更、未登記、越境などが重なっていました [S1] [S3] [S4] [S5] [S6]

1階は登記上の用途が事務所でしたが、実際には飲食店舗が営業していました。用途変更に関する手続きの要否は、建物や利用状況などによって異なります。今回は、引き渡しまでに売主の責任と費用負担で用途変更をすることが条件となりました。

建物の登記記録には、種類、構造、床面積などが記録されます。この物件の屋上には、未登記プレハブが存在していました。登記、撤去、現況での引き渡しなど、実際に採用した処理方法は記録から確認できません。

このほか、電線の越境があり、境界非明示の条件で取引を進めました。境界明示や測量図の交付を契約条件とした場合、それを実行できないことが契約上の問題になる可能性があります。非明示で進める場合も、対象範囲や既存資料、越境物の扱いを個別に確認する必要があります。

  • 登記と現況の不一致
  • 賃料交渉
  • リースバックの調整
  • 屋上の未登記プレハブ
  • 電線の越境
  • 境界非明示での売買

実際の対応|建物・賃貸借・設備契約・土地に分けて整理 [S1] [S2] [S4] [S5] [S7]

この事例では、建物、賃貸借、設備契約、土地の条件に分けて対応しました。1階店舗の状況を扱うとともに、賃料交渉とリースバックの調整を進めました。具体的な交渉条件や合意内容は、記録から確認できません。

継続契約の解約として、警備システムと玄関マットの契約を解約しました。売却スケジュールを組むときは、警備、清掃、マット、保守など、物件に付随する継続契約を一覧にしておくと確認しやすくなります。

未登記プレハブ、電線の越境、境界非明示についても、取引上の論点として扱いました。ただし、登記、撤去、承諾書の取得、契約書への記載など、個別にどの方法を採用したかはここでは明記しません。

買付または取り纏め依頼書は5本以上取得しました。民法では、契約は申込みと承諾によって成立することが基本とされています。購入申込書などは書類の名称だけで判断せず、記載内容や交渉経過を含めて専門家へ確認してください。

  • 登記と現況の違いを確認する
  • 賃料交渉とリースバックを分けて整理する
  • 解約または引き継ぎを検討する継続契約を洗い出す
  • 境界、越境、未登記部分の引き渡し条件を確認する
  • 各買付の価格と条件を一覧にする

買付比較の手順|同じ項目で並べて判断します [S1] [S2] [S5] [S7]

まず、届いた買付や購入申込書から、買付価格、契約・決済の希望時期、引き渡し条件、その他の条件を抜き出します。書式が違っても、比較表の項目はそろえてください。

次に、用途、賃貸借、未登記部分、越境、境界、継続契約など、売却前に確認が必要な事項を一覧にします。それぞれについて、売主側で対応するのか、買主と条件を協議するのかを整理します。

そのうえで、各提示の条件と売却スケジュールを照らし合わせます。条件の解釈に迷う場合や、実行できるか分からない条件がある場合は、承諾する前に専門家へ確認してください。

最後に、価格差と条件差を売主が確認し、採用理由を記録します。今回の事例では最高額より低い提示が採用されましたが、どの条件が判断に影響したかは確認できません。

  • 1. 買付価格と日程を同じ表へ転記する
  • 2. 条件を省略せず書き出す
  • 3. 物件と賃貸借の論点を対応主体別に整理する
  • 4. 実行可能な売却スケジュールか確認する
  • 5. 価格差、条件差、採用理由を記録する

失敗を避けるポイント|未確認の条件を決め手にしない [S1] [S5] [S6] [S7]

買付価格が高くても、記載された条件の意味や実行可能性を確認できていなければ、比較は終わっていません。反対に、提示額が低いという理由だけで候補から外す必要があるとも限りません。売主が優先したい条件を先に整理しておくと判断しやすくなります。

境界明示や測量図の交付など、第三者の協力を必要とする可能性がある条件は、実行できるかを事前に確認することが大切です。また、現況有姿という記載があっても、把握している越境物などの説明がすべて不要になるとは限りません。

口頭で協議した内容がある場合も、そのままにせず、契約書などへどのように反映するかを専門家と確認してください。

  • 最高額という理由だけで即決しない
  • 価格以外の条件を口頭確認だけで済ませない
  • 実行できるか不明な条件を安易に約束しない
  • 現況有姿なら説明が不要だと決めつけない

結果|最高額より低い提示を採用し、2ヶ月半で引き渡し [S1]

最終的には、最高額より7,000万円以上低い提示が採用されました。その後、複数の調整事項を取りまとめ、成約から引き渡しまで2ヶ月半で完了しています。

この事例から確認できるのは、最も高い提示が必ず採用されるわけではないという点です。一方で、採用された提示のほうが安全だった、取引条件が優れていた、実行の確度が高かったとまではいえません。これが、唯一無二の不動産の取引の特徴です。

買付を比較するときは、価格差と取引条件を整理し、採用理由を記録に残しておく方法があります。後から確認できるよう、比較に使った資料も保管しておくとよいでしょう。

  • 最高額との差だけで提示の良し悪しを決めない
  • 採用しなかった提示の条件も記録する
  • 価格差を受け入れる理由を売主自身で確認する
  • 契約後の売却スケジュールを整理する

一棟ビル売却前の売主チェックリスト [S2] [S4] [S5] [S6]

複数の論点があるビルでは、資料と現況の違いを一つずつ整理します。そのうえで、売却前に対応する事項と、条件を明示して買主と協議する事項に分けてみてください。

現況有姿という記載があっても、把握している事項の説明がすべて不要になるとは限りません。越境や未登記部分などについては、契約内容を専門家と確認しながら整えることが大切です。

  • 登記事項証明書と現地の用途、構造、床面積を確認したか
  • テナントの契約書、賃料、敷金、更新条件を確認したか
  • リースバックの対象や条件を整理したか
  • 警備、清掃、マット、保守などの継続契約を一覧にしたか
  • 境界標、測量図、越境物の有無を確認したか
  • 境界非明示とする場合の条件を買主と確認したか
  • 未登記部分の扱いを専門家へ確認したか
  • 買付価格と取引条件を同じ書式で比較したか
  • 採用理由を記録に残したか

よくある質問

一棟ビルの売却では、最も高い買付を選ばなくてもよいですか? [S7]

当事者には、契約をするかどうかや相手方を選ぶ自由が原則としてあります。ただし、すでに申込みと承諾によって契約が成立している場合は、その契約内容を確認する必要があります。購入申込書の記載や交渉経過によって判断が異なるため、採用を伝える前に専門家へ確認してください。

買付比較では、金額以外に何を確認すればよいですか? [S1] [S2]

契約日、決済日、引き渡し条件、買付に付された条件、境界・越境・未登記部分の扱い、テナントやリースバックに関する条件を確認します。同じ書式の比較表にまとめると違いが見えやすくなります。

境界を明示しないままビルを売却できますか? [S5] [S6] [S7]

境界非明示を取引条件として協議する余地はあります。ただし、確定測量図の交付や境界明示を契約上の義務とした後で実行できない場合は、契約上の問題になる可能性があります。非明示とする範囲、既存資料、越境物などの扱いは、契約前に専門家と確認してください。

登記上は事務所なのに飲食店が営業している場合、そのまま売れますか? [S3]

売却できるかどうかだけでなく、建物の利用状況と必要な手続きを個別に確認することが大切です。用途変更に関する判断は、建物や利用状況などによって異なります。建物表題登記の変更に関しては、土地家屋調査士にご相談しましょう。

屋上に未登記のプレハブがあると売却できませんか? [S1] [S4]

未登記プレハブがあるという事実だけで、売却の可否を一律には判断できません。構造物の状態を確認し、登記や撤去などの対応が必要かを、土地家屋調査士や建築士などへご相談ください。今回の事例で採用した処理方法は確認できません。

根拠・参考資料

  1. [S1] 水天宮前駅徒歩5分圏内・1棟商業ビル売却事例メモ|Work Full House®︎(確認日: 2026-08-04)
  2. [S2] 「投資家が安心して参加できる不動産市場の在り方」中間整理(案)参考資料|国土交通省(確認日: 2026-08-04)
  3. [S3] 建築基準法 第87条(用途の変更に対する法律の準用)|e-Gov法令検索(2024-04-01)(確認日: 2026-08-04)
  4. [S4] 不動産登記のABC|法務省(確認日: 2026-08-04)
  5. [S5] 確定測量図の交付が契約条件であるのに交付できなかった売主に違約金の支払いを命じた事案|一般財団法人 不動産適正取引推進機構(2025-01-01)(確認日: 2026-08-04)
  6. [S6] 越境物の説明不備をめぐるトラブル|一般財団法人 不動産適正取引推進機構(2018-10-01)(確認日: 2026-08-04)
  7. [S7] 民法 第521条・第522条(契約の締結及び内容の自由、契約の成立と方式)|e-Gov法令検索(2022-09-01)(確認日: 2026-08-04)

おわりに

一棟ビル売却では、買付価格、テナント、建物、境界、設備契約など、複数の事項を同時に整理することがあります。まず資料を集め、論点ごとに「売却前に対応するもの」「買主と条件を協議するもの」「専門家へ確認するもの」に分けてみてください。

Work Full House®︎では、買付比較に加え、登記と現況の違い、賃貸借、越境、継続契約の解約などを含めて売却手順を整理します。資料が十分にそろっていない段階でも、確認できている事実と未確認事項を分けるところからご相談いただけます。

本記事は、運営者から提供された事例情報をもとに、一般的な確認手順を整理したものです。用途変更、登記、越境、境界、契約成立などの判断は、物件の状態、当事者の合意、契約書の記載、自治体の取扱いによって異なります。個別の売却については、宅地建物取引士、弁護士、建築士、土地家屋調査士、司法書士など、内容に応じた専門家へご確認ください。

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