袋地の土地購入で通行権を確認する手順|遠方の一般法人の抵当権付き土地の決済事例

ビーチに近い土地など、立地に魅力を感じると、「この機会を逃したくない」という気持ちが先に立つことがあります。ただし、袋地、抵当権、相続未登記の隣地が重なる土地は、一つの合意書や現地の通路だけでは判断できません。

先に確認したいのは、「抵当権を抹消できる決済手順」と「接道道路まで利用できる通行根拠」の二つです。本件では売買が成立しましたが、確認できるのは、買主が囲繞地通行地役権設定合意書を判断材料にしたことまでです。将来の通行が法的に保証された事例とは断定できません。

この記事では、袋地の土地購入で通行権を確認する順番、書類と現地の照合方法、中間金を支払う前の確認事項を、実際の取引経過に沿ってやさしく整理します。

この記事のポイント

  • 抵当権抹消書類一式を司法書士へ事前に預けた後、決済を行った
  • 売買契約時の手付金とは別に中間金を送金した
  • 袋地解消につながり得る隣地は相続未登記で、調査された相続人が100人以上いた
  • 買主は、隣地管理者と旧土地所有者との通行合意書を判断材料にした
  • 通行地役権の登記状況、境界や法令調査の結論は非開示

先に結論

袋地の土地購入では、現地で通れることと、法的な通行根拠を確認できることを分けて考えます。抵当権付き土地の場合は、代金を支払う前に、抹消条件、必要書類、司法書士への書類預託、決済後の登記確認までの手順を整理することも大切です。本件では、相続未登記の隣地と通行合意書を調査し、抵当権抹消書類を司法書士へ預けた後に決済しました。ただし、通行地役権の登記状況は確認できていません。

目次

結論|袋地の購入は「決済できるか」と「利用できるか」を分けて判断します [S1] [S5]

抵当権付き土地を購入するときは、代金を支払う順番だけでなく、抵当権抹消の条件、必要書類、登記申請を担当する人を確認します。一方、袋地では、接道道路までの経路と通行の法的根拠を別に調べる必要があります。

民法には、公道に通じない土地について「公道に至るための通行権」を定めた規定があります。ただし、袋地であれば、希望する場所や幅で自由に通れるとは限りません。通行する場所や方法は、土地の状況や周囲への影響などを踏まえて個別に確認します。

法律に基づく通行権と、当事者の契約によって設定する通行地役権は同じものではありません。通行合意書がある場合も、誰が、どの土地について、どの範囲の通行を認めたのか、登記されているのか、現在の隣地所有者との関係はどうなっているのかを分けて確かめます。

購入判断では、通行できるかだけでなく、建築や利用の目的に合う通行幅・方法なのかも確認します。判断できない点が残る場合は、契約条件への反映や購入の見送りも含めて検討することが、失敗を避ける基本です。

  • 決済前に抵当権抹消の条件と必要書類を確認する
  • 公道までの通行経路を公図・登記・現地で照合する
  • 法律上の通行権と契約による通行地役権を区別する
  • 合意した人の権限と現在の登記名義を確認する
  • 未確認事項を残したまま送金しない

事例概要|遠方にある抵当権付きのリゾート地を購入 [S5]

対象は、ビーチに近いリゾート地の土地です。取引に関係する土地には、民間企業を抵当権者とする抵当権が設定されていました。

物件および司法書士以外の関係者が遠方におり、決済と抵当権抹消を同時に進めることが難しいと見込まれていました。そこで、弊社の提案により買主は、売買契約時の手付金とは別に中間金を送金し、先に抵当権抹消に必要な金額相当を買主に振り込み、その資金を使って抵当権者に弁済してもらう事で、抹消書類を決済日に郵送で間に合わせる計画で進めました。

中間金とは、何らかの目的で、土地や建物の売買契約後、手付金の支払いから残金決済までの間に支払う金銭です。支払うかどうかは売主と買主の合意で決めるものとされています。

本件では、その後、抵当権抹消に必要な書類一式を決済前に抵当権者から司法書士へ無事預けて頂き、書類を預けた後に決済および抹消登記と所有権移転登記を同時履行する事となりました。ただし、中間金の金額、送金先、返還条件、抵当権の抹消条件は非開示となります。

ここで紹介できるのは、確認された取引の順序です。中間金の妥当性や、この手順を別の取引へそのまま適用できるかについては、個別に専門家にご相談ください。

  • 売買契約時に手付金を支払った
  • 契約後・決済前に中間金を送金した
  • 決済前に抵当権抹消書類を司法書士へ預けた
  • 書類の預託後に決済した

問題点|抵当権だけでなく、通行・相続・境界が重なっていました [S3] [S5]

この取引では、抵当権だけを処理すればよいわけではありませんでした。取引に関係する複数筆が袋地となっており、接道している道路までの通行経路と権利を確認する必要がありました。

袋地解消につながり得る隣地は、古い所有者名義のまま相続登記がされていませんでした。戸籍を用いた相続人調査では、相続人が100人以上いることが確認されています。

このため、隣地の一部または全部の購入を打診することは、現実的ではない状況でした。ただし、相続人調査の基準日や、全員が確定していたかどうかは不明です。

さらに、コンタクトが取れた隣地管理者は、悪意の取得時効により土地を取得したものの未登記であると主張していたようです。しかし、判決、和解、登記など、取得が法的に確定したことを示す資料は確認できていません。

そのため、「土地を管理している人」「所有者だと主張する人」「登記上の隣地所有者」が一致しているとは限らない状況でした。通行合意書を確認するときも、署名した人に、対象土地について合意する権限があったかを確かめる必要があります。

現地利用については、郊外特有のライフライン未整備、境界と地積測量図の未整備、地歴の聞き取りが調査時の懸念事項となりました。農業振興地域への該当性や、土地からビーチまでにある保安林の整備・通行可否も調査対象でしたが、詳細は非開示となります。

  • 抵当権者と抵当権抹消の条件
  • 接道道路までの通行経路と権利
  • 隣地の登記名義と相続関係
  • 境界、面積、地積測量図
  • 水道や電気などのライフライン
  • 農業振興地域や保安林などの法令上の制限

実際の対応|司法書士への書類預託と通行合意書の確認を進めました [S1] [S2] [S5]

決済面では、手付金とは別に中間金を送金しました。その後、抵当権抹消書類一式を司法書士へ預けたことを確認してから決済する順序を取りました。

ただし、開示できるのは、書類を先に司法書士へ預けたという手順までです。書類の有効性や不足の有無をどのように確認したか、抹消登記が完了したかは非開示となります。

通行については、隣地管理者と旧土地所有者との間で、接道している道路から袋地までの通行に関する「囲繞地通行地役権設定合意書」が締結されていました。買主は、この合意書を信用して取引成立に至っています。

ただし、囲繞地という土地の状態、民法上の公道に至るための通行権、契約による通行地役権は、それぞれ分けて考える必要があります。合意書の名称だけで、権利の内容や第三者との関係が決まるわけではありません。

S2には、未登記の通行地役権と土地の譲受人との関係について、通路の位置や利用状況などを踏まえて判断した裁判例が掲載されています。ただし、S2は本取引個別の資料です。また、裁判例は個別事情に基づくため、本件の合意書が第三者へ主張できることの裏付けにはしていません。

  • 書類が預けられたことと、抹消登記が完了したことを混同しない
  • 合意書の名称だけで権利の効力を判断しない
  • 合意当事者と登記名義人の関係を確認する
  • 通路の位置、幅、利用方法、現地の利用状況を照合する

確認手順|契約・送金・決済の前に5段階で整理します [S1] [S4] [S5]

複雑な土地では、資料を集めるだけでなく、確認する順番を決めると判断しやすくなります。まず対象となる全筆と登記名義を特定し、次に抵当権と通行の問題を分けて整理します。

中間金を支払う場合は、金額だけでなく、支払う目的、送金先、支払期限、返還条件、決済が成立しなかった場合の扱いを契約書や特約で確認します。売主が宅地建物取引業者として自ら売主になる取引では、手付金等の保全措置が関係する場合もあるため、取引条件を個別に確かめてください。

通行について判断できない場合は、登記を確認する司法書士だけでなく、契約や紛争を扱う弁護士、境界や測量を扱う土地家屋調査士、法令上の制限を確認する行政窓口などへ、相談内容を分けて確認します。

  • 1.対象となる全筆、登記名義、抵当権の内容を確認する
  • 2.公道までの経路を公図、地積測量図、現地で照合する
  • 3.通行合意書の当事者、対象範囲、利用条件、登記の有無を確認する
  • 4.中間金と残代金の送金条件、抹消書類の預託手順を契約書へ反映する
  • 5.決済後に所有権移転と抵当権抹消の登記状況を確認する

結果|売買は成立しましたが、未確認事項も残っています [S5]

買主は、通行に関する合意書を判断材料として受け入れ、売買取引は成立しました。抵当権抹消書類一式を司法書士へ預けた後に抵当権が無事抹消され、決済完了したことも確認できています。

一方、通行地役権が登記されているかどうかは非開示となります。境界確認、地積更正、農業振興地域への該当性、保安林の整備・通行に関する最終結果は非開示となります。

したがって、本件は、複数の不確実な点を調査し、買主が残る不確実性を踏まえて取引した事例です。「通行権の問題が解消した」「安全な土地購入だった」とまでは評価できません。

  • 売買が成立したことは確認できる
  • 通行地役権の登記状況は確認できない
  • 境界・法令・ライフライン調査の結論は非開示

土地購入チェックリスト|書類・登記・現地を照合しましょう [S1] [S2] [S3] [S4] [S5]

袋地や抵当権付き土地では、書類だけ、または現地だけを見て判断するのは難しいものです。登記事項証明書、公図、地積測量図、売買契約書、通行合意書と現地の状況を照合し、食い違う点を整理しましょう。

特に通行合意書がある場合は、通行される側の土地について、合意した人に権限があったかが重要です。管理者の説明だけで判断せず、隣地所有者の登記名義、相続関係、合意書の対象範囲を確認します。

次の項目は一般的な確認候補です。必要な調査や対応は土地ごとに異なるため、契約前に司法書士、弁護士、土地家屋調査士、行政窓口などへ個別に確認してください。

  • 対象となる全筆の登記事項証明書を確認したか
  • 抵当権の内容、抹消条件、必要書類、申請担当者を確認したか
  • 中間金の金額、送金先、支払目的、返還条件が契約書や特約に記載されているか
  • 司法書士へ預ける抵当権抹消書類の内容と不足の有無を確認したか
  • 通行経路となる土地、幅、徒歩・車両の別、利用目的が明確か
  • 通行合意書の当事者と登記名義人との関係を確認したか
  • 未登記の通行地役権について、登記の有無や第三者との関係を確認したか
  • 境界標、公図、地積測量図、現地の状況に食い違いがないか
  • ライフラインの利用可否と引き込み条件を確認したか
  • 農業振興地域、保安林、開発許可などの窓口調査結果を書面で残したか
  • 確認できない事項を価格や契約条件へどう反映するか検討したか
  • 判断に必要な資料がそろわない場合に、契約や送金を延期できるか検討したか

よくある質問

袋地なら、隣地を自動車で自由に通行できますか? [S1]

一概にはいえません。民法上の公道に至るための通行権が認められる場合でも、希望する場所、幅、方法で自由に通れるとは限りません。徒歩での通行、自動車での通行、予定する土地利用に必要な幅は分けて確認してください。

通行地役権の合意書があれば、登記がなくても安心ですか? [S1] [S2]

合意書があることだけで安心とは判断できません。合意した人に土地について権限があったか、対象土地、通行範囲、車両利用、承継に関する記載、登記の有無を確認します。S2には未登記の通行地役権に関する裁判例が掲載されていますが、本取引において存在した合意書は非開示資料であり、本件の合意書の効力を裏付けるものではありません。

抵当権抹消書類を司法書士へ預ければ、必ず抹消できますか? [S5]

書類を預けただけで、抵当権抹消登記の完了が保証されるわけではありません。抹消条件、書類の内容、登記申請、完了後の登記記録を段階ごとに確認します。本件では書類を事前に預け、抹消登記も無事完了しています。

中間金を求められたら支払わなければなりませんか? [S4]

中間金を支払うかどうかは、売主と買主の合意で決めると説明されています。支払う前に、金額、目的、送金先、支払期限、返還条件、決済できなかった場合の扱いを契約書や特約で確認してください。売主が宅地建物取引業者として自ら売主となる場合は、手付金等の保全措置が関係することもあります。

中間金と手付金は同じものですか? [S5]

同じものとして扱わず、契約書の定めを確認してください。参考資料では、中間金は売買契約後、手付金の支払いから残金決済までの間に支払う金銭と説明されています。本件でも、売買契約時の手付金とは別に中間金が送金されました。

根拠・参考資料

  1. [S1] 民法(第177条、第210条~第212条、第557条等)|e-Gov法令検索(確認日: 2026-08-11)
  2. [S2] 最高裁判所平成10年2月13日判決・平成9年(オ)第966号 通行地役権設定登記手続等|不動産適正取引推進機構(裁判所公開情報をもとに掲載)(1998-02-13)(確認日: 2026-08-11)
  3. [S3] 重要事項説明における各法令に基づく制限等についての概要一覧|国土交通省(確認日: 2026-08-11)
  4. [S4] 不動産取引における手付金等の保全について|国土交通省(確認日: 2026-08-11)
  5. [S5] Work Full House®︎ 抵当権付き・袋地を含む土地購入の取引事例メモ|Work Full House®︎(確認日: 2026-08-11)

おわりに

袋地や抵当権付き土地は、魅力的な立地であっても、確認する順番によって判断のしやすさが変わります。まずは抵当権抹消の条件と決済手順を整理し、そのうえで通行経路、隣地名義、境界、ライフライン、法令上の制限を一つずつ確認してみてください。

判断できない事項が残るときは、急いで中間金や残代金を支払わず、契約条件への反映や決済日の調整を相談することも選択肢です。

Work Full House®︎では、登記事項証明書、契約書、合意書、測量資料などを整理し、「確認できた事実」と「まだ判断できない事項」を分けて検討します。袋地や相続未登記の隣地が関係する土地でお悩みの場合は、手元にある資料から次に確認したい項目を一緒に整理します。

本記事は、提供された事例資料と掲載した参考資料をもとにした一般的な情報です。通行権、地役権、取得時効、相続、抵当権抹消、中間金の扱いなどは、合意書、登記、契約条件、土地の成立経緯、現地の利用状況によって変わります。具体的な契約や紛争については、司法書士、弁護士、土地家屋調査士、行政窓口などへ個別にご確認ください。

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