築古不動産投資の拡大方法|小さな現金購入から融資・売却へ進む判断手順

築古不動産投資の拡大方法で大切なのは、安い物件を次々に買うことではありません。「修繕後に貸せるか」「家賃が入らなくても返済できるか」「売却時に残債を整理できるか」を、購入前に順番に確認することです。

今回紹介するのは、会社員として働きながら、低価格物件の区分マンションや築古戸建てから投資を始めた匿名投資家の事例です。最初の一戸を現金で購入して賃貸運営を経験し、その後に不動産投資ローンを段階的に利用しています。

ただし、計84室、平均利回り15%、月間税引後キャッシュフロー約150万円などの成果は、主に本人へのインタビューに基づく申告です。収支資料や融資残高などによる第三者確認の状況は不明です。不動産投資の始め方を考えるための一事例として、数字そのものより確認手順に注目してください。

この記事のポイント

  • 月の手残り目標から、必要な物件数や利回りを逆算する
  • 約200万円の空室区分マンションで、修繕・募集・入居付けを経験した
  • 融資は小口から始め、賃貸実績を積んだ後に借入規模を広げた
  • 家賃収入ゼロ、金利8%、建物価値ゼロという厳しい条件でも試算した
  • 取得から約10年後の売却を想定し、土地値、残債、売却費用を確認した

先に結論

築古不動産投資を拡大するときは、表面利回りの高さだけで購入せず、目標とする手残りから必要な規模を逆算することが大切です。最初の物件で取得、物件再生、入居者募集、家賃回収を経験し、次に空室リスクや金利上昇リスクを含む返済シミュレーションを行います。さらに、土地値、残債、売却費用を比べ、出口戦略まで成立する場合に次の収益物件を検討します。今回の保有戸数や収益は匿名投資家の本人申告であり、同じ成果を保証するものではありません。

目次

結論|築古不動産投資は5つの順番で拡大を検討する [S1] [S2]

築古不動産投資では、購入価格の安さや表面利回りだけで判断すると、修繕や空室によって資金が不足することがあります。収益物件を増やす前に、購入から売却までを一つの計画として確認してください。

今回の事例から整理できる手順は、目標設定、最初の物件での賃貸運営、修繕費の確認、返済シミュレーション、出口戦略の順です。どこか一つでも厳しい条件に耐えられなければ、購入を見送る判断も必要です。

金融庁の資料でも、投資用不動産は収入だけでなく、管理・修繕費、借入返済、金利上昇、空室、売却時の処分可能額などを含む長期的な収支で検討する考え方が示されています。

  • 目標とする月間手残りを決める
  • 小さな物件で取得から入居付けまで経験する
  • 購入価格とリフォーム費用を合わせた総投資額を確認する
  • 空室と金利上昇を含めて返済可能性を試算する
  • 土地値、残債、売却費用から出口を確認する

築古不動産を増やす前に、手残りから逆算する [S1] [S2]

この事例で最初に行われたのは、物件探しではなく、ゴールを数字にすることでした。匿名投資家は「5年以内に月間手残り30万円」、その先に「本業相当の月間手残り50万円」という目標を置いたと説明しています。

投資開始前には、三重県にある価格4,000万円、利回り7%の新築木造アパートを契約直前まで検討しました。しかし、投資方針が固まっていないと考え、購入を見送っています。

その後、手元資金約800万円から投資を開始しました。最初に低価格物件を現金で取得し、賃貸運営を経験してから融資へ進んでいます。

不動産投資は何戸から始めるべきか、一律の正解はありません。自己資金、修繕余力、管理に使える時間、空室が生活へ与える影響を確認し、損失が出ても維持できる規模から検討することが大切です。

  • 目標とする月間手残りを決める
  • 空室、経費、返済を含めて必要戸数を考える
  • 購入後も運転資金と次の修繕費を残せるか確認する
  • 購入する条件と見送る条件を先に決める

事例概要|約200万円の空室区分マンションから始めた理由 [S1]

最初に購入したのは、名古屋郊外にある約200万円の空室区分マンションでした。現金で取得し、水回りを中心に予算内でリフォームしたと本人は説明しています。

修繕後は、自分で撮影した写真などを使って客付け会社へ物件を提案し、入居者を募集しました。客付けとは、入居希望者を募り、賃貸借契約につなげる活動のことです。

入居決定後、本人申告では目標としていた利回り20%を達成しました。その後は関西や関東まで探索地域を広げ、区分マンションと築古戸建てを合計約6戸取得しています。

この事例の特徴は、いきなり規模を追わず、取得、物件再生、募集、家賃回収までの流れを最初の一戸で経験した点です。ただし、低価格物件でも空室リスクや予想外の修繕はあるため、価格が安いだけで安全とはいえません。

  • 購入前に修繕範囲と見積もりを確認する
  • 修繕後の募集条件と想定家賃を確認する
  • 管理会社や客付け会社へ募集方法を相談する
  • 入居後の収支を記録し、次の購入判断に使う

高利回りだけでは判断できない3つの問題 [S1] [S2]

第一の問題は、表面利回りと実際の手残りが異なることです。表面利回りは、一般に年間賃料を購入価格で割った、経費を差し引く前の指標です。

管理費、修繕費、税金、保険、空室、借入返済などを含めると、実際のキャッシュフローは小さくなります。購入価格だけでなく、諸費用やリフォーム費用を含む総投資額でも収支を確認してください。

第二の問題は、築古物件では購入後に修繕範囲が広がる可能性があることです。今回の匿名投資家は、水回り、間取り、雨漏り、リノベーションの余地などを確認していました。

本人は、想定改修費が150万円以上になりそうな物件を感覚的に見送っていたと説明しています。ただし、150万円はこの投資家個人の基準です。物件の規模や状態が異なるため、一般的な安全ラインとしては使えません。

第三の問題は、希望する時期や価格で売却できるとは限らないことです。金融庁の資料でも、返済途中に意図した価格で売れないリスクや、すぐに換金できないリスクが示されています。

  • 表面利回りと手残りを分けて考える
  • 購入後に増える可能性がある修繕費を見込む
  • 売却時期と売却価格を楽観的に固定しない

修繕判断|築古戸建ては水回り・雨漏り・構造を確認する [S1] [S4]

3棟目として取得したのは、築41年、3LDKの戸建てです。購入価格210万円に対して112万円をかけてリフォームし、本人申告では表面利回り31%になりました。

また、雨漏りがある物件について、提示価格950万円から約400万円まで価格調整して取得した例もあると説明しています。いずれも本人へのインタビューに基づく数字であり、一般的な値引き幅や収益性を示すものではありません。

築古戸建ては、安く買えれば必ず利益が出るわけではありません。雨漏りの原因、建物の傾き、基礎や構造部分、腐食、給排水設備などを見落とすと、当初の修繕費を超える可能性があります。

国土交通省は、既存住宅の状態を確認する仕組みとして、建築士が国の基準に従って行う既存住宅状況調査を案内しています。一般にインスペクションと呼ばれますが、確認できない部分もあり、将来の不具合がないことを保証するものではありません。

目視だけで判断しにくい物件では、専門家による調査を検討し、調査できた範囲とできなかった範囲を分けて確認すると安心です。

  • 水回り設備の交換範囲を確認する
  • 雨漏りの場所だけでなく原因を調べる
  • 傾き、基礎、構造部分、腐食の有無を確認する
  • 給排水設備の状態と更新費用を確認する
  • 必要に応じてインスペクションを検討する

融資判断|土地値・残債・金利を厳しく試算する [S1] [S2] [S3]

融資は3棟目以降に利用しました。本人の説明では、最初はノンバンクから200万円を借り、その後、日本政策金融公庫による1,000万円規模のアパート融資へ進んでいます。

14件目の物件では、金融機関への相談を重ね、75行目に当たる地方銀行から2,000万円のプロパー融資を受けたとしています。プロパー融資とは、信用保証協会などの保証を付けず、金融機関が直接審査して行う融資です。75行という相談数は本人の経験であり、融資審査の一般的な目安ではありません。

不動産投資ローンを使う際は、現在の家賃と金利だけで返済計画を作らないことが重要です。今回の投資家は、建物価値をゼロ、土地の売値を評価額の約0.7倍と仮定しました。そのうえで、家賃収入がゼロでも、現預金と土地売却代金で残債を返せるか確認したと説明しています。

返済シミュレーションでは、通常は金利4%を基準とし、最低限の耐性確認として8%でも返済できるか計算していました。これは本人独自の仮定であり、将来の金利や適切な審査基準を示すものではありません。

土地値は、固定資産税評価額など一つの数字だけで決めないことが大切です。国土交通省の不動産情報ライブラリでは、取引価格、地価公示、防災、都市計画などの情報を確認できます。実際の売りやすさは、接道、土地の形状、用途地域、周辺需要などによっても変わります。

  • 家賃が下がる場合とゼロになる場合を分けて試算する
  • 金利上昇リスクを反映した返済額を計算する
  • 現預金と残債を一覧にする
  • 土地の売却想定額を一つの評価額だけで決めない
  • 融資審査に出す前に収支とリスク対応を説明できる形にする

出口戦略|約10年後の売却を想定した事例 [S1] [S5]

本人は、出口を10年、融資期間を15年として計画し、取得から10年時点で残債を半分以下にする想定だったと説明しています。これは今回の投資家が採用した出口戦略であり、すべての収益物件に適した保有期間ではありません。

本人申告では、これまでに売却した物件は購入額を上回り、複数物件では買値の約1.5~3倍で売却できたとしています。ただし、各物件の取得費、保有期間、売却費用、譲渡損益を確認できる資料は提供されていません。

記事時点では、愛知県・岐阜県を中心に計84室を所有し、平均利回り15%、月間税引後キャッシュフロー約150万円との申告です。平均利回りが表面利回りか実質利回りか、キャッシュフローに含まれる経費の範囲や算定期間は明らかになっていません。

収益物件の売却では、売却代金の全額が手元に残るわけではありません。残債や売却費用を差し引き、税務上の扱いも確認する必要があります。譲渡所得は、譲渡価額から取得費や譲渡費用などを差し引いて計算されるため、個別の税務判断は税理士や税務署へ確認してください。

  • 売却時点の残債を試算する
  • 周辺取引などから売却可能額を複数の条件で考える
  • 仲介手数料などの売却費用を見込む
  • 保有中の大規模修繕予定を確認する
  • 売却に関する税務上の扱いを個別に確認する

購入前チェックリスト|調査から次の行動まで [S2] [S3] [S4] [S5] [S6]

今回の事例を、そのままご自身の物件選びへ当てはめる必要はありません。物件、地域、借入条件によって結果は変わるため、楽観的な条件と厳しい条件の両方で計算してください。

土地価格を確認するときは、周辺取引、接道、土地の形状、用途地域、災害リスクなども調べます。不動産情報ライブラリなどの公的情報を確認したうえで、不明点を不動産会社や専門家へ質問すると判断材料を整理しやすくなります。

水害ハザードマップ上の対象物件の所在地は、不動産取引における重要事項説明の対象です。購入判断では入手できる新しいハザードマップを確認し、必要に応じて宅地建物取引士へ説明を求めてください。

候補物件を見つけたら、物件価格、諸費用、修繕、募集、管理、借入、売却を一枚の収支表にまとめます。そのうえで、家賃低下、空室長期化、金利上昇、追加修繕が起きても資金を維持できるか確認することが、次の行動です。

  • 購入価格、諸費用、修繕費を含む総投資額はいくらか
  • 想定家賃と募集条件に無理がないか
  • 空室が長引いても運転資金を保てるか
  • 金利上昇後の返済額を計算したか
  • 雨漏り、傾き、腐食、給排水設備を確認したか
  • 取引価格、地価、用途地域、ハザードマップを調べたか
  • 売却想定額から残債と売却費用を引いて資金が残るか
  • 購入する条件だけでなく、見送る条件も決めたか

よくある質問

利回り20%以上の築古物件なら、返済に困りにくいですか? [S1] [S2]

利回りの高さだけでは判断できません。表面利回りには、管理費、修繕費、税金、保険、空室、借入返済などが十分に反映されていないことがあります。総投資額をもとに実際のキャッシュフローを計算し、家賃低下や空室が続く場合も確認してください。

築古戸建てを買う前にインスペクションは必要ですか? [S4]

すべての物件に一律で必要とはいえませんが、雨漏り、傾き、基礎や構造部分の劣化が心配な場合は検討する方法があります。既存住宅状況調査には確認できる範囲の限界があり、将来の不具合がないことを保証するものではありません。調査範囲や結果は建築士へ確認してください。

不動産投資ローンはいつから利用すべきですか? [S1] [S2]

一律の時期はありません。今回の匿名投資家は、最初の物件を現金で購入して賃貸運営を経験し、3棟目以降に小口融資を利用しました。ただし、これは本人の進め方です。自己資金、既存借入、物件収支、空室リスク、金利上昇リスクを整理し、返済を維持できるか個別に確認してください。

収益物件は10年持ってから売るほうがよいですか? [S1] [S5]

10年は今回の匿名投資家が設定した出口時期であり、すべての物件に適した期間ではありません。税務上は、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかにより、土地・建物の長期譲渡所得と短期譲渡所得が区分されます。残債、修繕予定、地域需要、売却費用、税金を含めて個別に検討してください。

金融機関に断られたら、何行も相談すべきですか? [S1] [S2]

相談先を増やすだけで融資が承認されるわけではありません。まず、賃貸事業の収支、自己資金、既存借入、物件価格、土地値、空室や金利上昇時の返済計画を整理してください。今回の75行目という数字は本人の経験であり、融資審査の一般的な目安ではありません。

根拠・参考資料

  1. [S1] 匿名投資家へのインタビュー事例・提供資料|Work Full House®︎編集部整理資料(確認日: 2026-08-01)
  2. [S2] 投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果|金融庁(2019-03-28)(確認日: 2026-08-01)
  3. [S3] 不動産情報ライブラリ|国土交通省(確認日: 2026-08-01)
  4. [S4] 既存住宅状況調査技術者講習制度について|国土交通省(確認日: 2026-08-01)
  5. [S5] 土地や建物を売ったとき|国税庁(確認日: 2026-08-01)
  6. [S6] 不動産取引時における水害ハザードマップ上の対象物件所在地の説明義務化|国土交通省(2020-07-17)(確認日: 2026-08-01)

おわりに

築古不動産投資では、安さや表面利回りだけでなく、「修繕後に貸せるか」「家賃収入が減っても返せるか」「売却時に残債を整理できるか」の順で考えることが大切です。

候補物件が見つかったら、購入価格、諸費用、修繕、募集、管理、借入、売却を一つの収支表にまとめてください。購入する条件だけでなく、見送る条件も先に決めておくと、不動産会社、金融機関、建築士などの相談相手と判断材料を共有しやすくなります。

本記事は、匿名投資家へのインタビューに基づく一事例と、公的資料をもとに一般的な確認手順を整理したものです。保有戸数、収益、利回り、融資、売却実績などの事例数値は本人申告を含み、第三者資料による確認状況は不明です。投資成果、融資条件、修繕費、賃料、売却価格、税務上・法務上の取り扱いは、物件、地域、契約、財務状況などによって変わります。特定の投資成果や融資承認を保証するものではありません。購入、融資、建物調査、税務、法務については、不動産会社、金融機関、建築士、税理士、弁護士などへ個別にご確認ください。

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